外で遊んで帰って来て、お菓子でも食べようと思っていたら「早く手を洗いなさい!バイ菌がいっぱい付いているから…」ってお母さんに言われたことがある人はたくさんいますよね?さて、ここで皆さんに質問です!“バイ菌”って何でしょう?答えは細菌やカビといった微生物のことですが、おそらく、ほとんどの皆さんが微生物に対して「汚い」、「怖い」、「病気になりそう」といったネガティブなイメージを持っていることと思います。ところがどっこい、微生物の中には私達のくらしに役立っているものが数多くいるんですよ(もちろん食中毒や病気を引き起こす微生物もたくさんいるので、手洗いはしっかりしましょうね)。
■くらしに役立つ微生物
私達のくらしに役立つ微生物(“有用微生物”と言います)って、どんなのがいるのでしょうか?いくつか例を挙げてみましょう。まず、微生物が食品分野に役立っている例です。納豆を作る納豆菌、ヨーグルトを作る乳酸菌などは知っている人もいるかと思いますが、意外と盲点なのが、マツタケ、シイタケ、エノキタケ等のキノコです。スーパーではキノコは野菜売り場に置かれていることが多いため、「野菜=植物?」ということで植物の仲間だと思っている人もいるかと思いますが、キノコは正真正銘の微生物で、分類学的にはミカンやお餅を青くするアオカビ等と同じく菌類(カビ類)という仲間に含まれます。次に、そのアオカビですが、これは現代医学に大きく貢献した微生物なんですよ。以前に、某テレビ局で放送され話題となったドラマ(現代のお医者さんが幕末にタイムスリップする物語)でも頻繁に出ていましたが、“ペニシリン”という人類が最初に手にした抗生物質(お薬)はこのアオカビによって作られたものなのです。そして、最後は洗濯用の洗剤です。「酵素パワーの…」といった宣伝文句で売られているものもありますが、多くの洗濯用洗剤には衣服に付いた油・タンパク質の汚れを落とすためにいろんな種類の“酵素”が配合されています。これらの酵素もその多くは微生物によって作られているのです。
■バイ菌は宝の山?
海や川、土といった自然環境中には多種多様な微生物が存在し、それらの中には先ほど紹介した有用微生物も多く含まれています。実際に、私たちはこれまでに数多くの有用微生物を様々な場所から分離し、これらを培養して(育てて)利用してきました。しかし、現段階で私たちが分離・培養できている微生物は地球上に存在するすべての微生物の約1%程度にすぎないと言われています。つまり、まだまだ多くの有用微生物がいろいろな場所に埋もれていることとなります。それらの中にはガンやエイズといった病気の治療薬を作ってくれる微生物やダイオキシン等の環境汚染物質をあっという間に食べてくれる(分解してくれる)微生物が含まれているかもしれません。そう考えるとバイ菌も捨てたものではないと思いませんか?むしろ“宝の山”と言った方が良いかもしれませんね。
(山梨日日新聞「知りたい好奇心」(2012. 3. 27. 投稿記事)を一部修正)