身近なものの中にこそ新しい発見がある! 〜ウキクサは未知の細菌の宝庫だった〜

地球上には多くの細菌が生息していて、その種類は1000万種を下らないと言われています。ところが、この中で私達が今までに飼いならす(分離培養する)ことができ、名前をつけてきた細菌の数はわずか1万種程度にすぎません!つまり、まだまだ地球上には私達がお目にかかったことのない“未知の細菌”が数多く残っているわけです。

■開発に挑戦
では、このような未知の細菌を分離培養するにはどうすれば良いでしょう?これまでに多くの研究者がこの難問を解決すべく様々な方法の開発に挑んできました。私もそういった研究者の1人なのですが、今回はちょっとした思いつきで、特に変わった方法を使わずに未知の細菌を分離培養できた例を紹介したいと思います。
未知の細菌を分離培養するためには、先に書いたように新しい微生物の分離培養法を開発するという方法もあるのですが、それとは別に、微生物を分離するための試料をうまく選択するという方法もあります、具体的には、深海や南極といった特殊なサンプルを微生物の分離源とするわけです。なぜなら、こういったサンプルは手に入れるのが簡単では無いため、それを研究材料として使える研究者が少なく、数多くの未知の細菌が“未発掘”のまま残されている可能性が高いからです。

■条件が同じ
でも、そんな特殊な試料など、当然のことながら手に入れるのは難しいものです。 そこで、私が注目したのは、「特殊」とは真逆の「身近な」サンプルです。実はこういったサンプルの中には、あまりにも平凡で身近すぎるため、細菌の分離培養を目的とした研究の対象にはなりにくいものもあるのです。つまり、特殊なサンプルと条件が同じになっている可能性があるというわけです。
私が選んだサンプルは田んぼ等にプカプカ浮いているウキクサだったのですが、これを調べてみると、その根っこから系統的に新しい細菌(つまり未知の細菌)がワンサカ捕れてきて、その割合は最大で分離培養した細菌の約30%も占めていました(普通のサンプルの場合は多くても10%くらいです)。このように「身近なものから新しい発見がある」ことは、微生物の分離培養だけではなく、他の事柄にも当てはまるかもしれません。例えば、夏休みや冬休みなどに、自由研究の宿題がある人もいるかと思いますが、テーマを探す際に身近なものの中で普段は気にしないものや事柄に注目してみると良いかもしれませんよ。
(山梨日日新聞「知りたい好奇心」(2017.8.8.掲載記事を一部修正)

研究室で栽培しているウキクサ